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FSPデータ活用講座 第20回

『上位客は単価の高い商品が好き』ってホント?

「上位客は単価の高い商品を好んで購入している」
「下位客はバーゲン品ばかり買っているチェリーピッカー」

といったような内容をCRMやFSPを扱った記事の中でよく目にします。上位客と下位客の買物かごの中身は全く異なるといった仮説です。同一カテゴリの商品の中でも上位客は高いプライスラインの商品を支持し、下位客は低いプライスラインの商品を支持しているとすれば、買上金額だけでなく利益貢献度も大きく違ってきます。実際に、チラシ特売に関わらず毎日のお買物で来店される上得意様の中には、お店がお勧めするこだわり商品を気に入ってリピーターになっている方がたくさんいらっしゃいますし、一方で、チラシが入った日には平常日以上にお客様が来店し、中には特売商品ばかり買物されるお客様もいます。

このような購買行動の違いから「お買上額の高い上得意様は一般のお客様よりも購買力の高いお客様」「お買上額の低い下位客は購買力が低いお客様」といったような仮説までありますが、FSPデータからみた下位客とは、あくまでも自店のお買物実績を分析しての評価ですから、一概に「上得意様=購買力が高い」「下位客=購買力が低い」と決め付ける事はできないでしょう。しかし、一般客よりも 上得意様の方が単価の高い商品をよく買われているとすれば、一般客に高いプライスラインの商品を訴求するよりも上得意様に対して行なった方が効果的とも考えられます。

では、本当に上位客と下位客では、お買い求めされている商品に違いがあるのでしょうか。そこで、ある食品スーパーの1年間分のカード会員購買データを分析し、この点について検証してみたいと思います。

まずは1年間分のカード会員購買データを集計してデシル分析を行ないました(表1)。よって、ここでいうデシル1は1年間を通して最もお買物された上位10%のお客様グループということになります。

(表1)食品スーパーのデシル分析(1年間の実績で評価)

デシル分析の結果を見ると、上位客になればなるほど、来店回数が多いばかりではなく、客単価・客点数も多くなっています。また1品単価も上位客の方が高めの傾向です。特にデシル9、10では1品単価が200円を切っていますから、この結果を見た限りでは「上得意様は単価の高い商品を好む」「下位客はチェリーピッカー」という仮説は正しいと考えられます。

では、お客様はどの価格帯の商品をよくお買い物されているのでしょう。上位客と下位客とではお求めになる商品のプライスゾーンに違いはあるのでしょうか。

まずは、1年間に販売された商品を細かな価格帯で区分しSKU数を調べました(表2)。1,000円未満の商品は100円刻み、100円未満の商品は50円刻みといったように価格帯を細かく分け、1,000円以上については、1,000円以上、1,500円以上、2,000円以上、5,000円以上というように価格帯を分けました。

(表2)1年間にお買上実績がある商品の価格帯別SKU数

各価格帯の構成比をみると、もっともSKU数が多いのは100〜199円で全体の34.4%。そして500円未満の商品で84.7を占めています。冒頭の仮説どおりであれば上得意様は高価格帯の商品を、下位客は低価格帯の商品をよく買われているという事になりますが実際はどうなのでしょう。

そこで、各価格帯の商品を購入している会員はどれぐらいなのか、デシル別に集計しました。(表3)

(表3)デシル別 各価格帯商品購入割合(会員数)

この表の見方は、各デシルの会員のうち、何割の会員が当該商品を購入しているかを表しています。100〜199円の行を見るとD1列は100%となっていますが、これは100〜199円の商品はデシル1会員全員が購入しているという意味です。仮にデシル1会員が1,000名とすれば,1,000名全員が購入しているという事です。

この表の結果を見ると、100〜199円の商品はデシル上下に関係なく殆どの会員が買物している事がわかります。この価格帯は、表2でもお話したように全SKUの約1/3を占めている中心価格帯ですので、上位客、下位客に関わらずお客様の来店理由はこの価格帯の商品を購入する事だということが分かります。
デシル毎に見てみると、デシル1は,1,500円までの商品はほとんどの会員が購入しています。2,000円以上の価格帯についても約8割の会員が買物しています。そしてデシルが下がるほどに単価の高いもの、あるいは100円未満の単価の安いものを購入している会員が少なくなっています。

やはり、ここでも冒頭の仮説どおり、上位客ほど単価の高い商品を購入されていました。正確に言えば、上位客は各価格帯の商品を満遍なく購入しているので、結果として他の一般客よりも高価格帯商品を購入しているという結果でした。

上位客ほど高価格帯商品を購入している事がわかりましたが、1回買っただけでは「好んで購入している」とは言えません。そこで、会員1人あたり1年間で何点購入しているかを価格帯ごとに集計しました(表4)。

(表4)会員1人あたり 各価格帯別年間購入点数

表の結果を見ると、デシル1は1年間で2,453点も購入しています。その数はデシル5の8倍、デシル10のなんと100倍にもなります
そのうち約半数の1,153点は中心価格帯の100〜199円の商品ですが、他の価格帯商品も購入しています。そしてデシルが下がるにつれ購入点数は少なくなっています。どのデシルの会員も100〜199円の商品を中心に購入しているようですが、点数を見ただけでは分かりにくいので、1年間の購入点数に占める各価格帯構成比を表してみました(表5)。

(表5)各価格帯商品購入構成比(点数)

デシル上下によって購入点数は大きな差がありましたが、構成比をみるとデシル7ぐらいまではあまり違いはみられません。デシル8〜10の下位客も、100〜199円の商品構成比こそ高いものの、他デシルほど100〜199円に集中している訳でもありません。どうやら下位客は安いものばかり購入しているというよりも、購入点数そのものが少ないため単価の高い商品を購入していないと言えそうです。

これまでの分析結果をまとめると次のとおりになります。

  • デシル上位ほど、来店回数・客単価・客点数・1品単価が高い。
  • 中心価格帯の100円台の商品はほとんどの会員が購入している。
  • デシル1は幅広い価格帯を満遍なく購入している。
  • デシルが下がるにつれ幅広い価格帯を購入している会員が少なくなっている。
  • デシル1は1年間で、デシル5の8倍、デシル10の100倍も購入している。
  • デシル上下で購入点数に占める各価格帯の構成比にあまり違いはみられない。

結果としては、冒頭に書いた仮説どおり上得意様は単価の高い商品を購入してはいました。ただし単価の高い商品を好んで購入しているというよりは、毎日のお買物の中で、安いものから高いものまで幅広い価格帯の商品を満遍なく購入していると言った方が正しいようです。一方で、下位客はバーゲン品ばかり購入しているという仮説に対しては、下位客1人1人に注目すれば、たまたま得意日に来店して何点か購入しているだけです。しかしそういった会員は上位客よりも多いために、全体で見ると「下位客はチェリーピッカー」と感じるのです。

そのように考えると、安易に「上得意様には高価格帯商品を」「下位客には単価の安い商品を」訴求することは考えものです。上得意様に対して高価格帯商品を訴求するには、毎日の買物行動からちょっと外れた提案を行なう事で「あと一品」を購入してもらうきっかけになるかもしれません。例えば、祭事やイベントに関連して高価格商品を使ったメニュー提案や食卓シーンの提案を行なえば、普段はあまり手に取らない商品を購入してもらえるのではないでしょうか。
下位客に対しては、特売日に来店した際に「また次も来たいな」と思ってもらえるような他店とは違ったサービスを訴求して来店頻度を高める事が、脱チェリーピッカーの鍵と言えそうです。
例えば、次回来店時に利用できるクーポン券や、来店ごとにスタンプが貰えるスタンプラリーなどで、来店習慣を付けてもらいます。その上で、他店とは異なるサービスやこだわりの商品を提案するのです。

今回のデータ活用講座に関連してお役立ち情報2008年8月号では、上得意様、買い回り客それぞれが、お店に望んでいるサービスについてお話しています。今回のデータ活用講座と併せて、ランク別プロモーションのヒントになれば幸いです。

東芝テック株式会社  FSP・コンサルティング担当


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